犬島 Part-Ⅱ =瀬戸内中年写真団= [美術・博物館]

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21世紀中年さんとのコラボ第二弾は、「犬島アートプジェクト」美術館&産業遺産である。



工場跡地の廃墟には、行ってはいけない「危険な匂い」と、危険を押して探検に行く「ドキドキ感」がある。見学に先立つガイダンスでも、十分注意しなければいけない旨の説明を受けるが、いやでも期待は膨らむ。

広大な敷地に広がる精錬所跡地に美術館は造られている。この建物、「古い精錬工場」からイメージする過大な『エネルギーの消費』という概念と、我々が21世紀に与えられた大きな問題、『環境』というテーマがモチーフになっている。
設計者の三分一博志(さんぶいち ひろし) 氏は1968年生まれ、今年42歳の新進気鋭の若手になるのだろうか。建物とは言え、ほとんどが地中の空間として存在し、外観はこの島を支えた御影石を多用しながらも、鉱物の冷たさや無機質感とは違う印象を受ける。また、この精錬所跡地に際立つ煉瓦製の「煙突」を上手く活かしているのも特徴の一つである。

この地下空間にある「アート作品」は一風変わっている。詳しく述べることを差し控えるが、「光」や「材料」の持つ特徴を上手く活かしているだけでなく、見る側の思考に軽いプレッシャーを与えているようにも感じる。
作者の柳幸典(やなぎ ゆきのり)氏も1959年生まれと私より年若ではあるが、素晴らしい仕事には敬意を払いたい。この作品は、是非現地での体験・体感することをお勧めする。

美術館の見学が終わると、いよいよ廃墟の鑑賞である。写真でもわかるように、大規模な「黒い煉瓦」の建物やプラントがそこにあったことを偲ばせる。近くでこれらの廃墟を良く見ると煉瓦に特徴があることがわかる。通常煉瓦は、土を原材料に焼き固めて建設資材とするが、この黒い煉瓦は、銅の精錬過程で生まれる残渣(スラグ材)を原材料として「煉瓦」にしている。また、煉瓦の大きさは、国々によって若干異なるが、基本は人の手で積みやすい大きさなのだが、犬島の煉瓦は一回り大きい。積み方も「イギリス積み」である。煉瓦好きにはたまらない。。

敷地の中を解説者の指示されたコースをゆっくりと歩きながら、この場所に数千人もの人々が忙しく働いていたことを想像するが、目の前の美しい海や空、そしてこの静寂がそれを拒む。そして、これらの遺構は、まるで「自然の一部として、昔からここに存在していたのではないのか?」とさえ思えてくる。
この精錬所跡地は2007年(平成19年)に「近代産業遺産群story30」に認定されている。
それは、近代化における産業の遺産ということだけでなく、我々が作った人工物が自然回帰する過程やこれら廃墟の「無言の示唆」を聞く場としての価値もあるのだろう。


なんとも感慨深い


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これは、溶鉱炉の跡である

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古くは大阪城の石垣や明治時代の大阪築港で使った御影石は、ここで採掘した

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発電所跡地

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船着場跡地、ここから精錬した銅を運んだのだろう

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船を舫う係船柱まで御影石でできている

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犬島と直島を結ぶ船<サンダーバード>

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コメント 3

21世紀中年

こちらもアップしました。今回もあまりかぶってないみたいですね。
by 21世紀中年 (2010-01-08 00:11) 

cjlewis

なるほど。。。
実は先に21世紀中年さんのとこにおじゃましてきました。
芸風の違い、楽しませていただきました。
過去のさまざまな風景やここで働いていた人々の姿など、
すごく想像の広がる空間ですね。
この中にあるアート作品って、、、う~ん、すっごく見てみたい!
あと、やっぱ、単純にローケーション自体の「わくわく感」も
たまらないっす。

by cjlewis (2010-01-08 13:32) 

esme

>21世紀中年さま
いよいよ最後ですね。。
>cjlewisさま
是非一度行ってみてください。とっても不思議な空間です。それと、「アート作品」サプライズが待ってます。。かつてこの場所は、廃墟を使って映画やドラマの撮影を行っていたそうです。。仮面ライダーが悪者と対決したんでしょうか、、「悪者」って昭和の言い方ですね・・・。
by esme (2010-01-11 20:42) 

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